第224話 夢を買う男

赤黒い空。風が吹き荒び、砂埃が舞う荒涼とした大地を、
古いバッグを肩に担いだ復員服姿の主人公が力なく進む。

建物の入口。地下から階段を上ってきた男とすれ違う。
暗い鉄の階段を降りる主人公。
ネズミが走りまわる地下室。
裸電球の薄明り。老人が一人佇んでいる。

「……友人に聞いて、来ました。」
「それでは、私どもの値段の方も……」
主人公は担いできた古いバッグを下ろして中身を机にぶちまける。
乾電池や携帯ラジオとともに汚れた哺乳瓶が転がり出す。
哺乳瓶を手に取り首を傾げる老人に主人公は呟くように答える。
「いいんです……もう」
うなづく老人。
案内された先にあった背もたれ椅子に腰掛ける主人公。
老人は注射器を取り出す。

「あのっ、その前に一つだけ……
 本当にどんな夢でも見られるんですか。」
老人はゆっくりうなづき、主人公の腕に注射針を刺す。
「それでは、ごゆっくり。」
静かに目を閉じる主人公。

……ごく普通の新婚家庭。取り立てて言うこともない生活風景。
泣き止まない赤ん坊を不器用にあやす主人公。
背後のTVでは湾岸戦争の話題。取りとめもない夫婦げんか。

熱を出した赤ん坊を抱え、深夜、必死に病院を探す若夫婦。

朝食を食べる一家。
TVでアナウンサーが無表情にニュースを読み上げる。
「今朝、政府は、核兵器の使用を許可しました。
 繰返します……」

そっと目を覚ます主人公。一筋の涙が頬に光る。
「いかがでしたか?」
主人公は呟く。
「とても素晴らしい夢でした……本当に……」
「みなさん、そうおっしゃいますよ……」

建物から出て、荒野をゆっくり歩き出す主人公。
赤ん坊の姿を思い浮かべながら……。
廃墟となった都市のビル群の遠景が映る。

おまえが大きくなった時
あの青い空に白い紙飛行機が夢を運ぶだろうか
おまえが大きくなった時
あの枯れた大地に咲いた名もない花が命を語るだろうか
おまえが大きくなった時
このビルの谷間に優しい唄が流れているだろうか
おまえが大きくなった時
この灰色の窓辺に沈む夕陽が安らぎをくれるだろうか
おまえが大きくなった時
この小さな胸に確かな喜びが育っていくだろうか
おまえが大きくなった時
この小さな手のひらに愛する心が通い合うだろうか
(『おまえが大きくなった時』/南こうせつ)

キャスト: 柳葉敏郎/石野真子
放送日: 1991年 春の特別編
 

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コメント一覧 (41件)

ずいぶん昔に見ました。当時はひどく切なく悲しくなって泣きそうになりました。
あのときは恥ずかしながら柳葉敏郎と某アーティストと間違えて覚えていたのでそれもセットで思い出すことがあります。
投稿者:名無し 2017-01-07 11:29:54
観たいですp(´⌒`q)
あれは泣きました(T_T)
投稿者:また 2015-11-23 20:36:02
感動しました・・・(*∀*¥)
投稿者:★アンパンマン★ 2015-11-23 15:22:56
今過ごしている何気ない日常が,実はとても幸せなんだと気づかせてくれる作品。
感動した。。。

投稿者:名無し 2015-11-22 14:35:02
今10代後半でバイトとか全然うまくいかない俺でもこの主人公みたいに数年後、数十年後にはあの時に戻りたいと思っているのだろうか
現時点ではとてもそうは思えないがもし戦争とかが起こったらそう思うのかな
投稿者:名無し 2015-11-22 01:25:03
もしこの作品がリメイクされていたら…政府から何かクレームが来ていただろうか?
投稿者:名無し 2015-11-19 18:08:04
時の女神より好きだわ
ほんまに泣ける
投稿者:名無し 2015-08-17 23:44:26
これもう一度みたくて仕方ない。
最後の詩が泣ける。
投稿者:名無し 2015-08-05 15:15:25
これを今拝見し、感動し、切なくなりました。私にも家族あります、2歳半です。核戦争なんて起きなければきっとこのご家族は壊れなくても済んだ…。自らの命を犠牲にしてまで子供を思いやる父親、幸せになって欲しかったです…。
投稿者:名無し 2015-06-12 14:47:11
フジテレビTWOで世にも奇妙な物語の再放送をやっているので、リメイクが無理ならそっちで再放送して欲しい

深夜帯でもいいからこれ再放送してくれないかな…世にも奇妙な物語の枠で終わらせるにはもったいないくらい名作

個人的に主人公があの後どうなったのかがとても気になる
投稿者:名無し 2015-05-30 22:22:30
泣ける
人間は未来に向かう生き物ではなく過去にすがる生き物なのだろうと思った。
あんな何でもない夢を10年も寿命を縮めても見たいほど
普通の暮らしがかけがえのない特別な幸せなのだと再認識させられる
投稿者:名無し 2015-04-19 19:34:25
10代後半に見て静かな衝撃を受けた作品です。

今はしがない主婦ですが
「何でもない日常が幸せ」であるこの作品が
心に残っているおかげで
ありがたく日々をすごせてると思います。

投稿者:名無し 2014-10-18 15:18:54
そうか・・現実では戦争で子供も妻も死んで、主人公だけが
街が滅び日常が幸せだったと気がついた。

その小さな夢が、切なすぎた。

最後の誌が涙を誘いました。平和であってほしいです。
投稿者:名無し 2013-11-19 09:56:34
最後の詩に、子供ながらに感動しました。
戦争前の今は亡き家族の夢を見た後に
荒野をさまようシーンが今も印象に残ってます。
投稿者:名無し 2013-08-12 15:12:41
人生はみんな夢だよ
投稿者:匿名希望 2012-11-26 20:11:44
この間YOUTUBEでみてきました。



泣いた
投稿者:道志和人 2012-02-12 19:19:02
二十世紀末は荒廃した未来が舞台になる作品が多かった。子どもの頃はそれが本当に怖かったけど、2011年の震災で人々が助け合っていたことを思い出すと、日本の未来は明るい気がする。
投稿者:名無し 2012-01-18 20:42:40
あれ・・・?

目から水が・・・?
投稿者: 2012-01-11 18:22:34
プロローグ

「すてきな夢の途中で、不覚にも目が覚めてしまった、という経験はどなたにもあると思います。続きを見ようと再び目を閉じてももうだめです。

わたしも、何度くやしい思いをしたことか。

もし、希望通りの夢が今晩見られるとしたら、あなたならどんな夢をご覧になりますか?

えっ、わたし? わたしなら・・・」
投稿者:翔 2011-02-18 22:36:20
すごく良かった
投稿者:   2010-10-30 10:10:45
本当にいい作品でした。
投稿者:かりん 2010-09-24 11:54:19
いつまでも忘れない作品。この世の中から核をなくせ!世界に率先して日本は非武装するべき。相手より先に自ら軍備を放棄しよう!
投稿者:ヘノロべッチHAYAKAWA 2010-07-05 23:38:44
この話は普通に夢から覚めるまで見てても

「ただのほのぼの感動か・・・?」と思ってたけど

外に出てからのシーンで「今までのは全てそうゆうことだったのか…」

と思い、あの短時間で号泣してしまった…



ギバちゃん自身も数ある芸能界人生のなかでも

この話に出演した時のことは今でもきっと強く覚えてるんじゃないかな…
投稿者:5313 2010-02-18 23:06:02
「なぜ主人公はこんな平凡な夢を見に来たのだろう」と思わせといて、最後は感動に包まれました。

決して裕福ではないけれど、普通に生活することが楽しい夢だったんですね。

しかし、夢の中の戦争のニュースが手がかりだなんて分かりにくい話でした。普通なら聞き逃してしまいそうです。
投稿者:Burdock 2010-01-26 05:03:18
小学生時代にリアルタイムで見ていたはずの話ですが…動画で改めて見ると、結構忘れている場面が多く、

こんな名作だったのか…と改めて納得しました。夫婦喧嘩ばかりでも結局仲直りして、息子が言葉を話し始めた一番幸せな時に…って言うのがもう切なすぎて。

以下、あらすじ詳細版です。



薄暗い地下室への階段を下りていく主人公。周りはネズミが走り回り、蜘蛛の巣も張っている。フェンスの壁の間から入ろうとした主人公に、

「いらっしゃい」と男が声をかけた。



「知り合いに聞いて、来たんですけど…」

「では、私どもの値段もご存じですね?」

立ち上がって近付いてきた男にちょっと緊張気味の主人公。肩にかけた鞄を見せると、「どうぞ」と案内された。



「この店は夢を売る店と言うのは本当でしょうか? どんな夢でも叶うのでしょうか?」

「はい。あなたの欲望の赴くままに身を委ねればよいのです」

主人公の質問に答えながらアンプルのふたを開けて準備を進める店主。この薬は、どんな夢でも見ることはできるが、神経を激しく緊張させるもの。なので、代償に寿命が10年縮むのは避けられないとの事。腕に薬を注射され、主人公の意識は遠のいていった・・・



赤ん坊の夜泣きに起こされた主人公は妻に頼もうとするが断られ、代わりに欠伸しながらミルクを作った。

朝、妻に小言を言われながら、可愛い息子タケシに頬寄せて出勤した。

会社で失敗して上司に怒られた。

風呂上がり。タケシのおむつ替えをする主人公。

「たまには残業してきてよ。家庭のために」と妻にぼやかれた。

「あーあ、あの人の言う事を聞いておけばよかった」

「あの人って?」

「結婚前に易者の先生にあなたの運勢を見てもらったんだけど、あなたは一生うだつが上がらないって言われたわ。あなたには夢ってものがないの!?」

「俺にも夢くらいあるさ」

「じゃあ努力してよ」



現実では、主人公はぐっすりと眠っている。



妻が同窓会に行っているので、帰宅後代わりにタケシの面倒をみる主人公。TVには「東岸戦争関連のニュースは情報が入り次第お伝えします」の文字。

しかし、帰ってきた妻はタクシーの中の男と親しげな様子。問い詰めるが、逆に今の家庭に対する不満をぶちまけられる。と、タケシが泣き出した。主人公が額に手を当てると熱い。タケシを抱えて急いで病院を探し周る二人。

やっと見つけた病院の医師曰く「知恵熱」で、2〜3日高熱が続くとの事。妻は主人公に謝った。

「タケシの奴、何考えてんだろうな」

と主人公が言ったその時、

「ママ」とタケシが喋った。

嬉しそうな妻と、「ママ」が先だった事にちょっと不服ながらも妻に言われた通りミルクを作る主人公。

そのバックのTVニュース「連合軍の核兵器使用を許可しました。繰り返します」

タケシの笑顔がぼやけ――



主人公は目を覚ました。いつの間にか山高帽を被った店主が話しかける。

「どうでした? 満足されましたか?」

「ええ…楽しい夢でした」

「みなさん、そうおっしゃいますよ」



弱った体で無理に立ち上がり、料金を払おうとバッグの中身を床にぶちまけた。無数の缶、電池、そして哺乳瓶…

震える手で哺乳瓶を拾おうとして諦める主人公だが、

「結構ですよ。それはお持ちください」

と店主。主人公は拾って持ち帰った。

「どうも、ありがとう」帽子を脱ぎ、会釈で送る店主。



出口付近で、同じく鞄を下げた男とすれ違い、地上に出るとそこは荒涼とした砂漠地帯だった。



砂埃の舞う中、主人公は歩き始めた。片手に哺乳瓶を持ち、首にはネックレス(おそらく妻の?)を付けて。



(ここであらすじの詩を主人公が呟く。以下はその時の映像)

笑顔のタケシと妻、軍艦から飛んできた核ミサイル…かき消されたタケシ、そしてキノコ雲…



哺乳瓶をしっかりと両手で抱くように握り、遠くに見える廃墟と化したビル群へと向かい歩いていく主人公…
投稿者:Feather moon 2009-08-10 23:23:17
これ好きだなあ。
投稿者:もい 2009-07-21 01:59:40
これは感動します。泣けるし涙が出る。感動系です。
投稿者:冨岡紘大 2009-07-20 13:11:44
訴えたいテーマは分かるし、ラストも良いんだけど、構成が中途半端な気がする。



伏線にこだわりすぎるあまり、あのテレビのニュースは余計だと思う。



だって主人公にとってあのニュースは一番の悪夢再来のはずなんだから……
投稿者:qwerty 2009-06-26 02:13:39
とても平凡だった日々、今は叶わぬ はかない夢だったですね。
投稿者:かずみ 2009-04-23 08:54:11
現実の世界には息子はいなくて乳瓶しかないけど

想いの中に生き続ける人材を夢で得たので

一つの希望を持って生きていける自信をつけた

良い話でもあり切ないストーリーでもあるね。


投稿者:アユ 2009-03-28 20:12:16
Great !
投稿者:かりけん 2009-03-24 19:50:13
ルナティックラブもいいが、断然この話が群を抜いて素晴しいと思う。今まで観た作品の中で一番好きだ。

「・・・ええ、いい夢でした」

と満足げに噛み締めてギバちゃん去ってくんだよなぁ。たしか。いいなぁ。思い出しただけでグッと来るなぁ・・・。



たしか中3か高1のとき。余韻は衝撃的だった。

この作品のソフト化を切に願います。



投稿者:DVD希望 2009-01-12 07:04:06
昔のことだから思い込みかも知れないけど、初めに

「バッドトリップすることもありますよ」

って注意を受けてなかったかな。



で、夢は子供はギャンギャンうるさいし、妻とも口喧嘩。とても愉快な夢じゃない。

そうしてバッドトリップのように見せておいて、

「どうだった?」

「とても幸せな夢だったよ…」

と言い残して去るのがこの話の肝だったような。


投稿者: 2008-07-05 00:15:55
主人公の のぞみの夢は、平凡な生活だったんですね。

        見れる動画               「パンドラ.TV」
投稿者:世にも怪奇な七物語 2008-07-01 18:17:44
私も子供の頃みて、涙が止まりませんでした。

切なくて切なくて…今でも最後の詩と柳葉さんが流廃の中を去っていくシーンが忘れられません。

一番好きな作品ですし、再放送されてほしいですね。


投稿者:まゆみ 2008-04-03 18:54:11
名作です。

柳葉さんの出る話はやっぱりいいですね。
投稿者:Dr、名無しマン 2007-11-14 16:48:53
子供の頃に見て未だに忘れられない作品。

悲しい作品なんだけど、何か心に訴えかけらるものがあった。
投稿者:ゆき 2007-10-10 03:51:50
名作中の名作。

現実と夢、淡く脆いのは夢だけではない。

むしろ現実の方が脆く儚い物なのだ。

あの後、男は何処は向かったのだろう。

夢の先にあるもう一つの現実で・・・
投稿者:  2007-07-20 14:33:25
子どもの頃だけど今でも心に残ってる話。
私もこの話が一番好き
投稿者:  2007-05-18 21:50:20
この話の原作はロバート・シェクリィと云う人の短編「夢売ります」ですね。
原作では冒頭の荒廃した現実の描写は極力伏せられていて、
ラストで「平凡な日常の繰り返しこそが主人公の夢見た空想だった」というオチ。
文体もかなりドライで荒涼とした読後感でした。
ハヤカワ文庫の『幻想と怪奇?』に収録されています。
投稿者: 2007-03-19 07:28:26
この話が一番好き。再放送しないかなあ・・・。夢から覚める直前シーンから、ずっと泣きっぱなしで、ラストの詩がうまく聞き取れないくらいで、ここでそれが読めてよかった。
投稿者:すずめ 2006-12-07 22:27:08
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